プルーストとイカ ― 読書は脳をどのように変えるのか?
文字を読めるというのはごく普通のことで、深く考えたことは全くありませんでしたが、この本を読んで考え方が変わりました。「文字が読める」というのはこんなにも凄い事だったのだな、と。文字が読めるように本を読み聞かせ、教育してくれた両親・学校に感謝ですね。
このシリーズは 脳の中の時間旅行 ― なぜ時間はワープするのかと脳の中の身体地図 ― ボディ・マップのおかげで、たいていのことがうまくいくわけをこれまでにも読みましたが、どれも身近な内容で面白かったです。脳の領域が云々というような難しい内容は、まぁ覚えられていないのですが、不思議さを味わう、くらいの気持ちでの読み物として十二分にオススメです。
以下、気になった言葉の引用とメモ。
真実は何者からも与えてもらうことができず、自分で生み出さねばならないものであることを意味していると思われる法則により、著者の英知の終わりであるものは、私たちの英知の始まりであるように思われる。プルーストの、「読書は自分の考えを引き出すものだ」という言葉の一節。これを受けてこの本の著者は以下のように書いています。
読書の目標は、著者の意図するところを超えて、次第に自律性を持ち、変化し、最終的には書かれた文章と無関係な思考に到達することにあるのだ。(…)読字は、体験すること自体が目的なのではなく、むしろ、ものの考え方を変え、文字通りにも比喩的にも脳を変化させる最良の媒体なのである。
日本語の読み手は、漢字だけを読む時は、中国語の読み手と同様の経路を使う。一方、規則性が高く平明な仮名文字を読む時は、むしろアルファベットの読み手に近い経路を使うが、まったく同じというわけではない。文字によって読字に使用する脳の領域が違うという事実は単純に興味深いです。
より正確な書き言葉で考えを記録しようとする書き手の努力の中には内的対話が含まれている。ソクラテスが対話による探求を重視し、書き言葉の「反論を許さない柔軟性のなさ」を批判していたのに対し、書くという行為自体に、自分自身との会話がある、という考え方。本を読んだらアウトプットをしましょう、というよくある話にも繋がる考え方です。
簡単な押韻の訓練を受けた子どもたちの音素認識能力は群を抜いて発達していた、そして読字を易々と習得した細かい内容は省略しますが、要するに読字には効果的な学習方法が存在する、という事です。研究が進み、よりよい学習方法が確立して実践されるようになると良いですね。
「読むことを覚えた時、あなたは生まれ変わる…そして、もう二度と、それほど孤独には感じない。」第5章で引用されているルーマー・ゴッデン(イギリスの作家)の言葉。本を読むことが趣味の一つである人間としては、「もし読むことができなかったら」と考えると確かに全く人生観が変わってしまう気がします。
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